文化・マナー

池に硬貨を投げないで—日本の観光地で広がるコイン投げ入れ問題

忍野八海をはじめ、日本の観光地で池にコインを投げ入れる行為が深刻化。水質悪化や法律違反のリスクも。正しいお購銭の作法と、旅行者が知っておくべきマナーを解説。

Moriby Mori

日本各地を歩き回りたいエディター。日本の小さな日常を発信。

忍野八海の湧池に沈む大量のコイン

いま何が起きているのか

日本各地の観光地で、池や泉にコインを投げ入れる行為が深刻な問題になっています。特に被害が大きいのが、山梨県にある世界文化遺産「忍野八海(おしのはっかい)」です。

忍野八海は、富士山の雪解け水が地中を通って湧き出る、透明度の高い湧水池で構成されています。国の天然記念物にも指定されており、本来は池底まで見通せる美しい水が特徴です。

しかし近年、観光客によるコインの投げ入れが急増。ボランティアダイバーによる回収数は、2024年の約4,400枚から、2025年には約18,000枚と約4倍に跳ね上がりました

池のそばには4ヶ国語で「投げ入れ禁止」と書かれた看板が設置されていますが、ルールを守らない人が後を絶ちません。


なぜ投げてしまうのか?

観光客からは「願い事のため」「幸運のため」といった声が返ってきます。ローマのトレビの泉のように「コインを投げれば願いが叶う」と誤解しているケースがほとんどです。また、池底にすでにコインが溜まっているのを見て、「みんなやっているから大丈夫だろう」と思ってしまう人も少なくありません。

しかし、日本の池や泉はトレビの泉とはまったく違います。コインを投げ入れても願いは叶いません。それどころか、法律に触れる可能性があります。

コイン投げ入れが引き起こす実害

コインの投げ入れは、「ちょっとした行為」では済まされない深刻な影響をもたらしています。

•        水質汚染:硬貨から銅や亜鉛などの金属が溶け出し、水質が悪化。藻の異常繁殖の原因にもなっています。

•        景観の破壊:池底に無数のコインが散乱し、本来の透明で美しい池の姿が失われています。

•        生態系への影響:金属の腐食により、池に住む生物が傷つくおそれがあります。

•        法的リスク:忍野八海のような国指定の天然記念物に物を投げ入れる行為は、文化財保護法により5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。


困っている主なスポット

忍野八海(おしのはっかい)— 山梨県

世界文化遺産「富士山」の構成資産であり、国の天然記念物。最も被害が深刻なスポットです。湧池(わくいけ)の池底には無数の硬貨が沈み、鏡池では藻が池中を覆うほど増殖しています。忍野村は現在、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで「環境保全協力箱」の設置費用を募っています。

神社仏閣の池— 全国各地

忍野八海に限らず、全国の神社や寺院の広場にある池や泉にもコインが投げ入れられているケースがあります。「池にコインがあるから投げてもいいのだろう」という連鎖反応が問題を拡大させています。


正しいお賽銭の作法

日本で願い事をしたいときは、神社やお寺の「賽銭箱(さいせんばこ)」にお金を納めるのが正しい作法です。賽銭箱は必ず拝殿(お宮)の正面に設置されています。

お購銭は投げ入れるのではなく、感謝の気持ちを込めて静かに入れるのがマナーです。神社では「二拝二拍手一拝」、お寺では合掌して一礼するのが基本です。

金額に決まりはありませんが、5円玉は「ご縁(良い縁)」の語呪合わせで縁起が良いとされています。

大事なのは、お金を納める場所は「賽銭箱」であって、池や泉ではないということです。


旅行者へのお願い

日本の美しい池や泉を見かけたら、その透明な水をそのまま楽しんでください。コインを投げる代わりに、写真を撮って美しい思い出を持ち帰ることが、この場所を守る一番の方法です。

もし願い事をしたいなら、近くの神社やお寺の賽銭箱へ。それが日本の文化に対する敬意にもつながります。

忍野八海の環境保護に関するお願い(忍野村公式)
忍野八海環境保全協力箱 クラウドファンディング(ふるなび)

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