「日本の温泉は、タトゥーがあると入れないんでしょう?」——旅行の計画を立てながら、そう心配している方は少なくありません。たしかに、日本にはいまもタトゥー(入れ墨)のある人の入浴をお断りする温泉や銭湯があります。小さなワンポイントでも、絵柄の意味に関係なく一律にお断り、という施設も珍しくありません。
ただ近年は、状況が少しずつ変わってきています。シールで隠せば入れる施設、最初からタトゥーOKを明示している施設、誰にも気兼ねなく入れる貸切のお風呂——選択肢は、思っているよりずっと多いのです。この記事では、なぜタトゥーが断られることがあるのか、施設のタイプによる違い、そしてタトゥーがあっても日本のお風呂文化を楽しむための具体的な方法を、順番にご紹介します。
1. なぜ、タトゥーがあると断られることがあるの?
日本では長いあいだ、入れ墨が反社会的勢力(いわゆる暴力団)のイメージと結びつけられてきました。その名残で、一部の公衆浴場や温泉施設では「他のお客様に安心して利用してもらうため」という理由から、入れ墨お断りのルールを残しています。海外でおなじみのファッションタトゥーであっても、スタッフがその場で見分けるのは難しいため、大きさや絵柄を問わず一律にお断り、という運用になりがちです。
数字で見ると、観光庁が2015年に全国の旅館・ホテルなどを対象に行った調査(回答した約580施設)では、タトゥーのある人の入浴を「断っている」と答えた施設が約56%、「断っていない」が約31%、「シールなどで覆う等の条件付きで認めている」が約13%でした。全国的な傾向を示す資料として現在もよく引用される調査ですが、その後、訪日旅行者の増加を背景に、制限しない施設や、ケースバイケースで対応する施設も見られるようになっています。つまり「絶対に入れない」わけではなく、「施設しだい」というのが正確なところです。
2. 施設のタイプで対応が変わる
日本のお風呂は、大きく3つに分けて考えると分かりやすくなります。
ひとつめは銭湯(せんとう)。料金は東京で大人550円の、地域に根ざした街のお風呂です。生活の場として使われてきた歴史があり、比較的おおらかなお店も見られます(とはいえ対応はお店ごとに異なります)。銭湯そのものの入り方やマナーは、別記事の「銭湯デビュー完全ガイド」で詳しく紹介しています。
ふたつめは日帰り温泉・スーパー銭湯。サウナや岩盤浴、食事処まで揃ったレジャー型の大型施設です。独自のルールを設けやすく、入り口に「入れ墨のある方の入浴はお断り」と明示している所が比較的多い傾向があります。
みっつめは旅館・ホテルの温泉。大浴場は不可でも、「貸切風呂(かしきりぶろ)」や客室に付いた露天風呂を予約すれば、誰の目も気にせずゆっくり温泉を楽しめます。タトゥーが大きい方には、これがいちばん確実で快適な方法です。
3. タトゥーがある人が日本のお風呂を楽しむ3つの方法
方法①:カバーシールで隠す
小さめのタトゥーなら、防水のカバーシールで隠すという方法があります。施設によっては「隠れていればOK」という運用をしているため、いちばん手軽な選択肢です。ただし、完全に隠しきれる大きさが前提。背中一面のような大きな絵柄は、シールでは現実的に隠せないことが多い点に注意してください。
方法②:貸切風呂・客室のお風呂を使う
旅館やホテルで「貸切風呂」「客室露天風呂付き」のプランを選べば、そもそも他のお客様と一緒になりません。タトゥーの有無を心配する必要がなく、同行者と一緒でもまわりを気にせず利用しやすいのが魅力です。
方法③:タトゥーOKの施設を最初から選ぶ
近年は「タトゥーフレンドリー」を掲げる温泉・銭湯をまとめた英語のディレクトリサイトがあり、出発前にブックマークしておくと探す手がかりになります。また、東京都の「WELCOME! SENTO」のように、多言語対応やキャッシュレス決済を整えた外国人歓迎の銭湯を探せる取り組みもあります。ただし、外国人歓迎の銭湯でもタトゥーへの対応は店舗ごとに異なるため、事前の確認が安心です。
4. カバーシールはどこで買える?
代表的なのは、防水タイプの「タトゥーカバーシール」と、肌色の「ファンデーションテープ」です。色やサイズの展開、持続日数、価格は商品によって異なりますが、数百円台から購入できるものもあります。水に強いタイプを選ぶと、温泉やプールでも使いやすいでしょう。
買える場所は、ドン・キホーテやドラッグストア、Amazonなどの通販サイト。外国人客の多いホテルでは、フロントで取り扱っている場合もあります。使い方は商品によって異なるため、実際にはパッケージの説明に従ってください。
基本的な貼り方は、タトゥーより少し大きめに切る→保護フィルムをはがして貼る→濡れタオルで上から軽く押さえてなじませる、の3ステップ。湯船に長くつかると端からはがれることがあるので、予備を持っておくと安心です。
5. タトゥーの有無にかかわらず、大切なマナー
最後に、これは全員に共通する基本マナーです。湯船に入る前に必ず体を洗い流すこと、タオルをお湯につけないこと、長い髪はまとめること。日本のお風呂は「みんなで気持ちよく使う」場所です。タトゥーを隠す・隠さないにかかわらず、このマナーを守る姿勢こそが、いちばん歓迎される入浴者の条件かもしれません。
迷ったら、予約前や入館前に一言たずねるのが確実です。「タトゥー(入れ墨)があります。シールで隠せば入れますか?」—この一言で、当日の行き違いをかなり防ぎやすくなります。英語なら“I have a tattoo. Can I enter if I cover it with a sticker?”と聞けば伝わります。
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